2号ファンドの投資方針、投資先支援の考え方をご紹介します

本ポストでは、電通ベンチャーズ2号ファンドの具体的な投資方針や、電通ベンチャーズならではの投資先支援の考え方を紹介します。

ファンドの投資方針

1号に引き続き、2号ファンドでも財務・戦略双方のリターンを高いレベルで両立させていくことを目指します。外部LP(リミテッド・パートナー)なしのCVC(コーポレート・ベンチャー・キャピタル)だからこそできる長期的・大局的な価値創造を活動の柱にしつつ、厳格な基準で必要な財務リターンもしっかり追求していく。両者の最適バランスを様々な角度から検討し精緻化していくことこそがCVCの難しさであり、また成功に向けたポイントだと考えています。唯一解のないCVCのKPI設定やPDCAプロセスに関しては、引き続き様々なステークホルダーと対話を続けながら、改善を続けてまいります。

スタートアップとの連携を通した電通グループの事業開発に関しては、What(どの領域/事業レイヤーを対象とするか)とHow(どのようなアプローチで事業共創を行うか)の両面における、スピード感を意識した取り組みを心がけています。またその先には、より本格的な共同事業開発や資本業務提携、あるいは電通グループによるM&Aの可能性も見据えており、現在これらのプロセス間の連携精緻化も進めています。

1号ファンドでは比較的飛び地の拡張領域を投資対象としていたのですが、2号ファンドでは当初ターゲットとして、より電通グループの現業に近い領域であるマーケティング/セールステクノロジー、コマース/リテール、メディア/コンテンツ/コミュニティ、XR、バーティカルDX等を設定しました。拡張領域を狙う余白は一部残しつつも、基本的には各領域でしっかり専門性を蓄積しながら、投資先サポート及びその延長にある共同事業開発をより本格的に推進していく予定です。

また電通ベンチャーズでは、CVCならではの領域戦略策定にも力を入れています。投資先と電通グループのアセットとの連携を通した長期的な価値創造を目指し、投資と事業開発、具体案件の実行とインサイト抽出のための抽象化を行き来しながら、日々戦略仮説の精度向上に努めています。

デザインシンキングのプロセスを援用した、スタートアップとのオープンイノベーションプロセスの概念図。情報収集と戦略実行、抽象と具体を常に行き来しながら価値創造に取り組んでいく

投資後の事業開発支援

電通ベンチャーズの事業開発支援は、常にEntrepreneurs First、つまりスタートアップ経営者の意思を最優先して行ってきました。CVCとスタートアップの関係でよく問題になるのが、“大企業プロトコル”の押し付けによる事務的無駄作業の発生、イノベーションイメージ向上だけが目的のPR的POC、お金は回るが本質的な事業アセット蓄積が進まない単発受託作業などです。そのような潜在的な“CVCの罠”を回避することは、大企業である限り簡単なことでないのは確かです。しかし電通ベンチャーズでは、あくまでも投資先を主語にした、彼らの事業アセット構築につながる長期的な共創関係を築いていくことにこだわっていきたいと考えています。

また、個社を主語にした価値の刈り取り(Value Claiming/Capturing)だけでなく、まずはエコシステム全体の価値創造(Value Creation)にフォーカスすることも重要視しています。業界や個社のバリューチェーンの垣根は曖昧になってきており、このような環境下で自社のドメインや取り分のみを過度に意識し、自ら境界を設定してしまうことは機会損失にもつながります。新しい時代に相応しい新しい事業共創を、業界を越えた様々な企業の皆様と進めていければと考えています。

なお、電通ベンチャーズは(株)電通の経営企画局の管轄で設立されましたが、現在は(株)電通グループのR&D統括組織である電通イノベーションイニシアティブ(DII)へと管轄を移しており、よりグループ視点、グローバル視点での推進がしやすい体制となっています。多くの実績を持つ事業開発部隊や、様々な外部機関と共に最先端領域の研究を進めるインテリジェンス部隊、電通グループの海外事業を統括・管理するDentsu International とのリソース連携を推進する専門部隊などを軸に、事業支援/事業共創のケイパビリティを強化しています。

DIIが立ち上げに関わった組織としては、ソフトウェアエンジニアリングを核としたイノベーション・事業開発支援を行う在サンフランシスコの合弁会社 Dentsu Innovation Studioや、XRテクノロジーを活用し、新しい顧客体験作りからビジネス開発までを行う共創型のグループ横断組織 XRX STUDIOも存在し、それぞれ電通ベンチャーズの投資先とも事業連携を進めています。

DIIの詳細は近日公開予定のDIIウェブサイトでも発信していく予定ですので、ご期待ください。

マーケティング・コミュニケーション連携

事業開発における協業こそが電通ベンチャーズの戦略目標ではあるものの、スタートアップに対するマーケティング・コミュニケーション領域での専門的な連携も重要です。私たちとしてもまずは得意なマーコム分野でサポートを行いながら関係を深め、その後より難しいチャレンジである共同事業開発に進んでいく、というのが取り組みやすい協業プロセスの一つだと考えています。

一方で、大企業を主な顧客としてきた電通グループでは、スタートアップに対するマーコム支援において課題があったのも事実です。いくつかの質の高い成功事例はあるものの、大企業向けに最適化された多くのソリューション、プロセス、マネタイズモデルは当然そのままスタートアップ向けに使えるものではなく、規模や効率の面で、いわゆるイノベーションのジレンマが起こっていました。

「提案内容の質にこだわりすぎており、スピード感を持ったやり取りができない」「ワンストップのパッケージ販売が中心で、モジュール化されたソリューション購入ができない」「打ち合わせに多くの人が参加しているが、それぞれの役割が分かりづらい」等々、スタートアップの皆様からはこれまでに様々なフィードバックをいただきました。

それらを真摯に受け止め、強い危機感を原動力に生まれたのが、Startup Growth Partners(SGP)という(株)電通の社内横断プロジェクトです。社内知見やスタートアップ対応担当者を集約して昨年始まったこのプロジェクトには、スタートアップに対する専門的なグロース支援に特化した、マス、デジタル、ブランディングそれぞれのチームが存在し、成長フェーズや業種に応じた独自カスタマイズのソリューションを提供しています。スモールチームで事業の成功まで伴走する姿勢を評価いただいており、既に50社を超えるスタートアップの皆様を顧客に抱え、更なるケイパビリティの向上に向けて日々進化を続けています。

また、 CARTA HOLDINGSが(株)電通と共同で展開するテレシーも、電通グループ全体での危機意識及びグループ内連携によって生まれたソリューションの一つです。テレビCM関連の事業アセットを豊富に抱える(株)電通と、ネット広告に強いCARTA HOLDINGSの良い部分を組み合わせ、少ない予算で、効果を可視化しながら、プランニング/CM制作/出稿/効果測定までワンストップでTVCMを始めることができるソリューションとなっており、スタートアップの皆様にも幅広く活用いただいております。

(株)電通のクリエイティブを中心としたチームが2017年から提供しているTANTEKIも、「新し過ぎる“アイデア”が、熱い“想い”が伝われば、その成長は加速する」をコンセプトにしたスタートアップ向けのクリエイティブ・ソリューションを提供しています。多くのスタートアップに、電通がこれまで大企業に提供してきた伝える技術を「コミュニケーションのプロトタイピング」というモジュールで提供し、支援を行っています。

電通ベンチャーズでは、スタートアップ専門のプロデューサー集団であるSGPや、電通グループが持つ上記のようなソリューション群とより有機的な連携を行っていくことで、投資先に対するマーコム支援も益々強化してまいります。

以上の方針や考え方は当然今後PDCAを回しながら、アジャイルにチューニングをしていく予定です。様々なステークホルダーから謙虚に学ぶ姿勢を徹底し、自らを常に変化/進化させながら、スタートアップエコシステム全体の発展にどのように貢献できるかを考え続けること。この基本を忘れずに、引き続き皆様と共に試行錯誤を続けていければと考えています。

笹本康太郎 Managing Partner @ Dentsu Ventures

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